介護現場で本当に求められている移乗支援とは?― 導入と活用のギャップをアンケートから読み解く ―

「介護DXナビ」を運営するロボタスネット株式会社では、介護現場で働く人を対象とした 【介護従事者向けアンケート】職場の移乗支援体制と現場が求める支援策について の調査を実施いたしました。介護現場の「移乗支援体制整備」と「現場が求める支援」のギャップについて、結果をレポートいたします。

目次

調査サマリー

  • 多くの職場で移乗支援機器やルールは整備されているものの、「十分に活用されていない」というギャップが明らかになった。
  • 支援機器が使われない主な要因は、個人の意識ではなく「運用環境」に集中している。
  • 現場が管理者に求めているのは、機器導入よりも「人員配置・方針・教育」を含めた体制整備である。
  • 移乗介助の身体的負担は高く、現状の体制では将来の継続就労に不安を感じる職員が多い。
  • 自由記述からは、利用者の重度化・体格差、スタッフ構成の偏り、精神的負担、管理者の理解不足など、複合的な課題が浮き彫りになった。

調査方法・対象者

調査期間:2025/12/01~2026/01/10
調査対象:介護現場で働く職員
調査方法:インターネット調査

本アンケートには33名の方からご回答をいただきました。回答者の多くは40〜50代・介護経験10年以上の介護職であり、日々、現場の最前線で利用者支援に携わっている皆さまの声が集まっています。

調査結果詳細

「支援策・機器はある」けれど、「十分に活用できていない」という実態が浮き彫りに

移乗支援策として、多くの職場でスライディングボード2人介助のルールなどの移乗支援策がすでに整備されていることが分かりました。

一方で、「しっかり活用されている」と感じている方は一部にとどまり、「あるけれど、使いきれていない」という実態が見えてきました。

この結果が示唆するものは以下と考えられます。

①「整備=定着」ではない
多くの職場でルールや機器は揃っているのに、活用度高いとは言い切れない状況です。
つまり課題は「運用(使い続ける仕組み・使える状態)」にあると考えられます。

②支援策が「軽装備中心」に偏っている
導入数が多いものはスライディングボード2人介助ルールなど、比較的導入しやすいものが上位に位置しています。一方で、負担軽減効果が大きい可能性のある「移乗リフト」や「アシストスーツ」については少数でした。
つまり、「導入しやすい支援策」には取り組めているが、負担を大きく下げる設備系までは普及していない、という構造が見えます。

③「特にない」という回答も多い
対策を講じている施設が一定数ある一方で、ほとんど対策が整っていない職場もあるようです
つまり、介護業界全体としての、最低限の設備ラインが整っていないとも言えます。

このことから、介護現場における職員の負担軽減の支援の在り方を、介護福祉業界全体で考え整備し、そして「導入した設備をしっかり活用する」工夫が必要です。
では、なぜ今ある支援機器を活用できていないかを次で読み解きます。

使われない原因は「個人の意識」より「運用環境」に集中している

移乗支援策や機器が活用されにくい理由」について、現場の職員が感じるものはグラフのようになりました。

上位の意見は、

・物理的にスペースが足りない
・操作に時間がかかる
・操作が難しい・慣れていない
・職場の雰囲気的に使いづらい


となっており、機器の性能によるものより、現場で使える「条件」が整っていないことが主な要因と考えられます。
このことから、現場が最大限に支援機器を活用するには、「スペース・時間・操作性」に重点を置き、実際の現場に合わせた運用方法を設計する必要があると考えます。

また、「利用者・家族が不安を感じる」という意見もみられ、精神的な側面でも使いやすい体制を整えるために工夫を講じる必要もあるようです。

では、現場の職員が勤務先に求める支援策は何でしょうか?

現場が求めているのは「機器」+「人」+「運用」

アンケートの結果、上位5つに挙がったのは「運用環境の整備」です。

つまり現場は、機器を導入するだけでなく、「安全に実践できる環境とルールとスキル」を求めていることがわかります。

ルールがあっても人がいないと実践できない
・人によってやり方が変わる


というように、制度と実情のギャップ、ルールが曖昧で定着しない、という結果が見えてきます。

また、「利用者・家族への啓発」を望む声も一定数ありました。

・利用者や家族が「人が抱えた方が安心」と感じる
・機器を怖がる
・介護側の安全優先が理解されにくい


といった要因で、現場職員が機器の使用を控えてしまうというケースも考えられます。
安全な移乗を行うには、職員だけでなく利用者側の理解も必要となってきます。
加えて、職員が安全に移乗介助ができるということは、利用者側の負担も軽減できるということを利用者やご家族に理解していただくことも重要です。

では、移乗介助の支援策が、職員の働きやすさや定着に与える影響について考えます。

移乗介助の負担は、働き続けられるかに直結している

移乗介助による身体的負担は、10段階評価で平均7点以上と、非常に高い水準でした。

「5年後もこの仕事を続けられるか」という問いには、不安や迷いを感じている方が多い一方で、職場環境が改善されれば続けたいと考える方が6割以上にのぼりました。

現状では、「はい」は少数で、不安・迷い(どちらともいえない)が最多です。つまり、現状の移乗支援体制だけでは 継続就労への確信が持てない層が大きいと考えられます。
一方で、体制が改善されれば、「はい」が最多となり、継続意向が大きく上昇しています。支援体制を整えることは、職員の健康だけでなく、離職防止・人材定着にも深く関わるテーマであることがわかります

自由意見からみえた現場の声

今回の自由記述からは、移乗支援に関する困りごとは単純な「腰が痛い」ではなく、

  • 利用者の重度化体格差
  • 人員・職種構成の偏り(女性のみ/高齢職員/腰痛持ち)
  • ツールがあっても“周辺条件が揃わず使えない
  • 研修・標準化不足(自己流/外国人スタッフ教育)
  • 管理者・上層部の理解不足
  • 精神的負担(気遣い・不公平感・恐怖感

が複合的に重なっていることがわかりました。つまり、課題の中心は「個人の努力不足」ではなく、環境・仕組み・体制の問題にあります。

①利用者特性(重度化・大柄・立位困難)が負担を増やす

・重たい利用者1回で腰痛、しびれる
・どんな利用者が入所してくるかビクビクする

体格差が大きい場合や、利用者の特性により動きに制約がある場合、スタッフが無理をして対応するケースがあります。
スタッフが無理をする前提での介助の工夫・努力が要求され、身体の負担のみならず精神面でも不安が生じている状態です。

②スタッフ構成(女性のみ/体格差/高齢化)による負担増

・女性スタッフしかいない
・年上の職員が多い
・腰痛持ちが多い

利用者との体格差が大きく、人力での移乗がそもそも難しいという状況もみられました。

③2人介助でも解決しない「精神的負担」と負担の偏り

・パートナーが腰痛持ちだと可哀想で自分が頑張らないとと思う
・介護経験者が身体的不調を訴え介助を行わない
・正社員が無理をして実施している

チーム内で「できる人」が無理をして抱え込む構造があり、不公平感・責任感・罪悪感が負担を増幅させています。
身体負担だけでなく、人間関係・役割の固定化が離職リスクに直結しやすい状態です。

④「ツールがあっても使えない」周辺条件不足(ミスマッチ)

・スライディングボードがあっても車椅子のウイングが上がらないと難しい
・床走行リフトは居室が狭く移動も手間。天井走行が普及してほしい
・施設の広さ等に合わせたツール導入を希望

支援機器は「単体で導入」しても、周辺の設備(車椅子仕様・動線・居室の狭さ)が揃わないと機能しない、という問題が見えています。

⑤代用品(タオルケット移乗)が示す「危険な現場適応」

・タオルケットで移乗するが破れるのではとハラハラする

という意見もありました。これは、限られた設備の中で身近な備品で移乗を行うという、現場努力により工夫をされているケースでありますが、破損の不安や事故リスクなど、安全面・精神面で問題が発生しています。
正規のツールを使える体制がないために、リスクの高い運用が生じている可能性があると読み取れます。

⑥研修・標準化不足(自己流・理解不足・外国人スタッフ教育)

・介護が自己流になっている
・研修しても定着しない

「研修したかどうか」ではなく、統一手順として定着したかが課題になっています。

⑦管理者/上層部の理解不足(運営課題)

・管理者が必要と感じていない
・上層部に知識がない
・ボディメカニクスだけで全部解決すると考えている
・福祉用具が導入されていない
・コストの問題

現場の課題認識と、管理側の認識がズレています。
結果として、現場が個人購入で対応するなど、属人的な対応に依存している状況があります。

よかった意見

よかったご意見としては、
・入浴介助のためツールを導入し、現場から好評であった
・床走行式リフトに関しては全員が問題なく使えている。
・スライディングボードを活用できている
・研修の実施やスタッフ間の話し合いがよくできている

といったものが上がりました。現場にフィットした機器導入ができている施設は、しっかりと活用できているようです。
また、スタッフ間のコミュニケーションしっかりと取れる環境も、研修内容の定着や自己流を減らすカギになります。

アンケート全体からみえたこと

介護現場の移乗支援は「機器やルールは一定整備されている一方で、十分に活用されていない」というギャップが明確になりました。
活用を妨げている主因は、機器の有無や個人の意識というよりも、スペース・動線、準備にかかる時間、習熟機会、頼みやすさといった「運用環境」に集中しています。

なお、これは「支援機器が不要」という意味ではなく、機器を導入しても現場で使える条件が整っていなければ、十分な効果を発揮しにくいことを示していると考えられます。
むしろ支援機器の導入は、抱え上げの機会を減らし2人介助の必要性を下げるなど、結果として人員負担や精神的負担を軽減し、運用の安定につながる可能性があります。

また自由記述からは、利用者の重度化体格差、スタッフ構成(女性中心高齢化腰痛)、チーム内の負担偏りによる精神的負担周辺条件のミスマッチ(車椅子仕様や居室の狭さ等)、管理者・上層部の理解不足など、複合的な課題が浮き彫りになりました。

一方で、体制が改善されれば「今の職場で働き続けたい」と回答する方が多数を占めており、移乗支援体制の整備は、職員の健康維持にとどまらず、離職防止・人材定着にも直結する重要テーマであることが示唆されます。今後は「導入すること」だけを目的にするのではなく、人員配置(2人介助が成立する体制)・抱え上げない方針の明確化指導/研修の定着・動線/置き場を含む環境整備をセットで設計し、現場で“使い続けられる仕組み”へと落とし込むことが鍵となります。

最後に

2人介助が【最適解】とされてきた時代から、現在は機器を活用しながら安全に介助する時代へと移行しています。
厚生労働省も介助者の身体的負担軽減に向けた取り組みを推奨しており、現場の安全性と持続性の観点からも、機器活用は有効な手段と考えています。

本アンケートからは、機器を活用した介助が前提となりつつある一方で、それを現場に定着させるための運用設計が十分に整っていない実態が浮き彫りとなりました。

ロボタスネットは、こうした時代の変化だけではなく、現場の声を踏まえたうえで、2人介助を前提とするのではなく、機器を活用した介助を基本とした運用をご提案します。

機器を「導入すること」ではなく、「使い続けられる仕組みとして定着させること」が、移乗支援の質と持続性を左右すると考えられます。

移乗支援は、これまで「人の工夫」で支えられてきました。しかし、介護現場を取り巻く環境が変化する中で、その在り方も転換期を迎えています。
現場が無理なく使い続けられる形に整えることで、職員にも利用者にも負担の少ないケアの実現につながることでしょう。

調査結果に活かせる、移乗支援を実践的に学び・体験できる機会

今回のアンケート調査から、移乗支援の課題は「知識」だけでなく、実際に見て・試して・比較しながら、自施設に合う方法を検討できる場の不足も影響していることがうかがえました。
ちょうど今月、移乗支援に関する機器の学びと体験の機会として、「移乗支援フェアin大阪」 が開催されます。

基調講演に加えて専門家によるセミナー、多くの機器メーカーが参加され、来場をお待ちしています。
移乗支援を実践的に学び、体験できる機会として参加をしてみてください。

  • 開催日:2026年2月13日(金) 10時から16時
  • 会場:ATCエイジレスセンター
  • 内容:移乗支援に関する展示/体験/相談
  • 対象:施設管理者・現場リーダー・教育担当の方 など

👉 詳細ページはこちら

ご自分の施設の状況に合わせて検討したい方へ

アンケート結果は全体傾向を示すものですが、実際の移乗支援は 施設規模・職種構成・利用者像・既存の取り組み によって最適解が変わります。
「何から始めるべきか」「導入・研修・運用をどう設計するか」など、調査結果も踏まえて一緒に整理したい方は、下記よりご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次