【リフト事例】“持ち上げない介護”で腰痛ゼロへ。大今里ケアホームのリフト活用と職員定着の取組み

大今里ケアホーム

種別:

介護老人保健施設

定員:

136名

使用ツール:

床走行式リフト

取材日:2025/09

リフト導入をいち早く実践

大阪市東成区にある「大今里ケアホーム」(運営:医療法人浩治会)は、定員136名の介護老人保健施設です。
同施設では、約10年前からリフトを活用した移乗介助に取り組み、介護職員の身体的負担を減らすとともに、入所者にとっても安心・安全なケアの実現を目指してきました。

現在では、多職種連携のもとでリフト使用が日常的に定着しており、移乗動作の質の向上や業務効率化、人材定着にも寄与しています。今回は、こうした取り組みの背景と成果について、現場職員の声を交えてご紹介します。

導入前の課題

リフト導入前、大今里ケアホームの現場では以下のような課題がありました

課題
職員の腰痛が慢性化

抱え上げによる移乗を基本としており、腰痛リスクが高かった。

課題
新入職員への教育コストが大きい

力の加減や移乗介助のコツを習得するまでに時間がかかっていた。

課題
安全な移乗がスタッフの経験に依存

人により介助の仕方に差があり、事故リスクへの不安もあった。

導入の経緯

移乗支援機器の導入を検討するにあたり、複数の製品を比較・検証しました。
その際に重視したのは、「使用のしやすさ」や「対象者の負担軽減」、「スタッフの心理的ハードルの低さ」です。
リフトの導入は、職員の身体的負担を減らすだけでなく、安全で安定したケアを継続するための基盤づくりとして位置づけられました。

導入の際は、以下のプロセスを段階的に進めています。

その
他施設の見学・体験による使用イメージの明確化

導入前に、すでにリフトを活用している施設を複数見学。
実際の使用シーンを体験することで、職員が「自分たちにもできる」と感じられる具体的なイメージを持つことができました。

「百聞は一見にしかず。実際の動きを見て“これなら使える”と思えたのが大きかったです。」

その
現場スタッフの意見を集約し、受け入れやすい製品選定

比較検討の段階から介護職員の意見を取り入れ、操作性・対象者への当て心地・安全性などを現場目線で評価。
結果として、スタッフが安心して使える機種を選定することができました。
このプロセスが、導入後の定着率の高さにつながっています。

その
機種別にマニュアルを作成し、誰でも使える環境づくり

導入後は、職種や経験年数に関係なく使用できるよう、写真入りの操作マニュアルを作成。
機種ごとに「使用場面・手順・注意点」を整理し、誰でも同じ基準で安全に使える環境を整備しました。

「マニュアルのおかげで“見ながら覚えられる”ので、新人にも教えやすくなりました。」

導入の効果

導入後、現場では明確な変化が見られました。
職員の身体的負担軽減だけでなく、チーム内のコミュニケーションや安全意識にも良い影響が広がっています。

その
腰痛リスクの大幅低減

重度者への移乗の多くをリフトで対応できるようになり、「持ち上げない介護」への移行が進みました。
これにより、慢性的な腰痛に悩まされる職員が減少し、離職防止にもつながる成果が見られています。

その
新入職員の即戦力化

リフト操作を統一ルール化したことで、経験年数にかかわらず同じ手順で安全な移乗介助が可能に。
新人教育にかかる時間が短縮され、早期に現場で活躍できるようになりました。

その
職員間の連携強化

リフト使用に関する情報共有を定例化したことで、チーム全体で安全意識を共有する文化が生まれました。
「誰が・どのように対応しても安全に移乗できる」環境づくりが進み、職種間の連携にも好影響をもたらしています。

その
心理的安全性の向上

「自分の体を守りながら介護できる」という安心感が、働き続けるモチベーションの向上につながっています。
身体的負担だけでなく、精神的な安心感が広がったことが、結果的にケアの質の安定化にも寄与しています。

成功のポイント

リフト導入では、「すぐに慣れてスムーズに使える」わけではありませんでした。
最初のうちは“U字の法則”のように慣れるまでの時間が必要でしたが、職員全員で理解を深めながら進めたことが、定着につながりました。

段階的に導入し、使いながら慣れていった

初期段階では、限られたユニットから試験的に導入。
まずは使うことに慣れることを優先し、介助スピードより安全性を重視しました。

「最初からスピードを求めるんじゃなくて、“腰痛を防ぐためにやっている”と納得してもらうことが大事でした。」

職員がリフト操作に慣れるにつれ、2人介助が不要な場面も増え、徐々に効率化と安全性の両立が実現しました。

理解と共有が定着の鍵

リフトの操作は、慣れていない職員が無理にスピードを上げようとすると危険もあり、
初期には戸惑いも見られました。
しかし、慣れた職員が実際の動きを見せることで“これならできる”と納得が広がり、使用率が上昇しました。

「慣れた職員のスピードでやっているのを見てもらうと、“これなら使える”と理解してもらえたんです。」

現場全体での意識づけと成果

「腰痛が労災になると職場もスタッフもダメージが大きい」という共通認識を持ち、
“腰痛を防ぐためのリフト活用”という目的を全員で共有。
結果として、手で介助する際に起きていた小さな擦過傷や筋痛の発生はほぼなくなり、
職員の身体的・心理的負担が大きく軽減されました。

「今では“リフトを使うのが当たり前”になりました。難しいことではなく、慣れてしまえば安心して使えます。」

ご利用者・ご家族の声

導入後は、利用者・ご家族の双方から前向きな声が多く寄せられています。
「無理な移乗をしないので安心」「スタッフが落ち着いて介助してくれる」など、安全面だけでなく、介護への信頼感が高まっています。

また、家族からも「安全な介護がされている」「職員の腰痛対策にもなっているのが良い」といったフィードバックがあり、
“持ち上げない介護”が施設全体の安心感につながっていることが伺えます。

さらに、施設見学の際にリフトが活用されている様子を見た求職者からは、
「安心して働けそう」「設備が整っている印象」といった声もあり、採用面にもプラスの影響が生まれています。

「利用者さんにも職員にも優しい環境づくりができたと思います。」

今後の展望

今後は、これまでの成果を踏まえ、“持ち上げない介護”のさらなる定着と発展を目指しています。

  • 他ユニット・在宅復帰支援フロアへの拡大
  • 定期的な使用状況のモニタリングとフィードバック
  • 職員定着率の向上を目指すICT・機器連携の強化

また、リフト活用をきっかけに、「安全・快適・継続可能なケア」という施設理念を現場で具体化していく方針です。
現場の声をもとに改善を重ねながら、誰もが安心して働き・暮らせる環境づくりを推進していきます。

編集後記(メッセージ)

介護現場で「当たり前のように抱える」ことが慢性腰痛につながり、それが人材の流出やサービス低下の一因となっているのは周知のとおりです。
大今里ケアホームのように、ルール面・文化面の両方から「持ち上げない介護」へと転換していく姿勢は、
単なる設備導入を超えて、“働きやすさとケアの質を両立させる実践モデル”として注目に値します。

機器を使うことが目的ではなく、「人を守る手段としての機器活用」が自然に根づいていくこと。
この考え方こそが、これからの介護現場のスタンダードになっていくのではないでしょうか。

大今里ケアホームについて

大今里ケアホームは、医療法人が運営する介護老人保健施設です。地域に根差した医療と介護の提供を理念とし、医師・看護師が常駐する体制により、入所者の安心を支えています。季節ごとのレクリエーションや機能訓練にも力を入れ、多職種連携のもと、生活機能の維持・向上を目指しています。

設立

2005年11月

所在地

大阪府大阪市東成区大今里西2-17-16

施設種別

介護老人保健施設

運営法人

医療法人 浩治会

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