【導入事例】全室導入で業務の質が変わる。 大今里ケアホームの取組み紹介

大今里ケアホーム

種別:

介護老人保健施設

定員:

136名

目的:

負担軽減・業務効率化

取材日:2025/09

お話を伺った方 | 事務長 西林 氏  介護長 北吉 氏

大阪市東成区にある「大今里ケアホーム」(運営:医療法人浩治会)は、定員136名の介護老人保健施設です。
施設内の全室に見守りシステム「HitomeQ(ヒトメク)」を導入し、従来の巡回中心の介護スタイルから脱却。
タブレットを活用した記録と組み合わせることで、全室でICTを活かしたケアが可能な体制を構築しました。

“使うのが当たり前”の環境づくりを目指し、職員・利用者・ご家族すべてに安心と納得を届けています。

課題と導入背景

大今里ケアホームでは、これまで夜間の定期巡回や職員による目視確認を中心とした見守り体制を採用しており、
介護職員の身体的負担や心理的ストレスが蓄積しやすい状況にありました。
また、紙への手書きによる記録作成は、入力のばらつきや記録の抜け漏れが発生するリスクもあり、
業務の非効率性や情報共有の難しさが長年の課題となっていました。

これらの状況を改善するために、以下のような観点からテクノロジーの導入を検討することになりました。

  • 夜間巡回時の移動や確認作業の負担軽減
  • 状態変化の早期把握とリスクの回避
  • 記録の標準化・正確性向上・共有の容易さ
  • 職員のストレス軽減と定着率の向上

そこで導入を決定したのが、見守りシステム「HitomeQ」による、ICTを活用した介護支援体制の構築でした。

導入の経過と成果

導入から半年以上が経過し、快適性の向上・業務の効率化・職員の安心感 といった多面的な成果が現れてきているようです。

今回は、事務長の西林氏、介護長の北吉氏にお話を伺いました。

 
  課題

  • 夜間の巡回による入居者の眠りの妨げや心理的ストレスが課題だった
  • 記録が紙と口頭伝達中心で、情報の抜け漏れや伝達ミスが生じやすかった
  • 記録内容の標準化ができておらず、スタッフによって記載の深さや視点にバラつきがあった
  • 現場状況の可視化が不十分で、管理者がリアルタイムに判断しづらかった
  • 業務の属人化や夜勤時の負担偏りにより、急な欠員時のリスクが大きい構造になっていた

 
  導入機器

  • HitomeQ ケアサポート 136台
  • タブレット端末
  • インターネット環境の整備

 
  導入の決め手

  • 同一法人でも見守り機器が導入されていたので活用イメージがつきやすかった
  • カメラ機能のある見守りシステムを求めていた
  • 設置に違和感がない製品の見た目も大きなポイントとなった
  • 大阪府の介護テクノロジー導入補助金の支援を活用できた
  • 巡回業務の負担軽減と入居者の安眠確保
  • リアルタイムな状態把握で安心感が向上
  • 記録作業の迅速化と情報の見える化
  • スタッフの心理的安心とモチベーション向上
  • 「人員不足の抑制と離職予防への寄与

成功のポイント

導入から約6か月が経過し、現在では想定していたとおりに現場は動いているようです。導入から活用までの成功ポイントについてお聞きしました。

選定から導入までの丁寧なプロセス設計

導入前の選定段階では、稼働施設の見学ショールームでの体験を通じて、自施設に合った機能や運用のイメージを明確化。さらに、現場でのデモ利用も実施し、納得感をもって選定が進められました。

現場にフィットさせるための独自準備

設置完了までに、独自の使用マニュアルを整備。運用の際に迷わないよう、映像を見てから駆け付ける対応ルールなどを策定し、ショート動画で周知するなど、現場に“使えるかたち”で浸透させていきました。

導入初期の丁寧なフォローアップ

稼働初期1ヶ月は、介護長が現場スタッフに寄り添いながら運用をチェック。使い方の確認と並行し、現場でのフィードバックを吸い上げて調整がなされました。この取り組みが、早期の定着につながりました。

職員の納得感と成果の“見える化”

訪室回数が1日あたり約80回減少し、75%以上の職員が“身体的・精神的負担が減った”と回答。さらに転倒やずり落ち事故の減少発報音の減少によるフロアの静けさといった効果も確認され、「効果が目に見えることで、現場も納得して活用できている」との声もありました。

チャレンジを支える風土と組織の文化

事務長からは、「これまでのリフト導入などで“新しいものを使う”風土が育っていた」とのコメントもあり、組織としての柔軟性と挑戦への積極性が、今回のスムーズな導入を後押ししていたことが伺えます。

導入が生んだ現場の安心と落ち着き

✅ 見守り業務の省力化と“安心して見守れる”体制の確立
HitomeQケアサポートの導入により、入居者の状況をリアルタイムで可視化できるようになり、巡回の必要性が大幅に低下。結果として、1日あたりの訪室回数が81回も減少しました。

これまで頻回だった訪室が減ることで、職員の身体的・精神的負担が軽減されたほか、夜間の物音も減り、入居者が静かな環境で安眠できるようになったという声も聞かれています。

✅ 転倒事故の減少と“リスクの芽を早期に潰す”体制へ
見守り体制の強化は、実際のアクシデントの減少にもつながっています。
導入前後1か月を比較すると、転倒などのアクシデント発生件数が月あたり6.92件から4.83件へと減少
カメラ付きセンサーによって早期に変化を察知し、起き上がりや離床行動に即応できる体制が功を奏したといえます。

✅ 情報共有と判断精度の向上で、ケアの質も安定
センサーや記録ソフトにより、記録の正確性と即時性が向上
映像・記録・通知の3点セットでの情報共有が進んだことで、**「迷わず動ける」「見てから判断できる」**といった声が現場からも多数上がっています。
結果として、申し送りミスの防止やケアの質の安定にも好影響を与えています。

🗣 ご家族・スタッフの反応

🏠 ご家族からの反応

導入時には、映像を扱うことに対して戸惑いや不安の声があることも想定していましたが、実際にはそのような反応はほとんど見られませんでした。
何かあったときに映像を確認できるので安心」という声が非常に多く、安心材料として好意的に受け止められている様子がうかがえます。
入所時の説明でも好印象を持たれやすく、施設の信頼性向上にも寄与しているようです。
また、天井設置型でデザイン性も高いことから、「気にならない」「上品で良い」といったお褒めの言葉も寄せられています。

👥 スタッフからの反応

映像によって入所者の特徴的な行動や動きが可視化され、個別対応がしやすくなったと感じている職員が多くいます。
特に深夜帯の見守りにおける不安や負担感の軽減につながっていることが伺えます。

💼 求人や採用への影響

ICT導入施設であることを志望動機に挙げる求職者が増えているとのことで、施設の魅力のひとつとして定着しつつあります。
職場見学でも「介護テクノロジー」に関心を持ち、前向きな質問をしてくれる見学者が増加しているとの声もあり、採用活動にも良い影響を与えています。

🔭 今後の展望

行動データの活用による“その人らしいケア”の実現へ

HitomeQケアサポートによって蓄積される日々の行動データやアラート記録を活用し、入所者一人ひとりの行動リズムや生活スタイルに合ったケアの提供を目指しています。
将来的にはこの情報をもとに、在宅復帰を見据えたリハビリ的視点での支援や、身体機能の維持・向上につながるアプローチへとつなげていく構想を描いています。

テクノロジー活用を取り入れた新人教育の強化

もともと新入職員に対しては、丁寧な現場研修を重視してきた施設ですが、今後はさらに、ICTを活用した介護をしっかりと体得してもらう体制の強化を進めていきます。
新人が早期に業務に慣れ、いきいきと働ける環境を整えることが、ケアの質向上にもつながるという考えのもと、教育制度のさらなる充実が計画されています。

働きやすさとケアの質を両立する職場づくりへ

職員が働きやすい職場は、利用者にとっても良い施設であるべき」という理念のもと、

  • 業務効率化精神的
  • 身体的負担の軽減
  • チームケアの強化

を意識した取り組みを今後も継続していきます。現場の声に耳を傾けながら、職員も利用者も安心できる環境の構築を目指しています。

支援制度の活用

本取り組みは、令和6年度 介護テクノロジー導入支援補助事業を活用して実現されました。
さらに、大阪府介護生産性向上支援センターの「伴走支援プログラム」にも採択され、導入前の製品選定から効果測定、運用のポイントまで、専門アドバイザーとともに推進されました。
補助金制度の活用により初期費用の負担が軽減され、現場からも前向きな声が上がったことも導入の大きな後押しでした。

また、伴走支援によって経営層・現場双方の納得感ある導入プロセスが実現できたことが、定着と活用の成功につながったとも言えるでしょう。

大阪府知事から発行された「大阪府介護生産性向上モデル事業所」認定証

まとめ・読者へのメッセージ

136床すべてに見守りセンサーを導入──基本設備として根付いた活用体制へ
大今里ケアホームでは、HitomeQケアサポートを全室(136床)に導入し、日常業務の一部として活用される体制が確立しています。夜間巡回の効率化や記録作業の軽減、転倒アクシデントの減少といった定量的な効果に加え、スタッフが安心して働き、入所者が静かに休める環境が生まれています。

導入当初から、「やるなら全床」「基本設備として機能させる」という姿勢で取り組んだことで、システムの活用定着がスムーズに進みました。これは部分導入では得られない全体最適の効果を示す好事例でもあります。

テクノロジーは「人が活きる職場づくり」の基盤に

取材の最後に伺った印象的な言葉があります。

「ICTの導入は、業務を効率化するだけでなく、働く人がいきいきと働ける職場をつくるための基盤。
それが入所者にも必ず良い形で還元されると思っています」

働きやすさとサービスの質の向上は、決してトレードオフではありません。
“人”が主役である介護の現場だからこそ、こうした視点からのテクノロジー活用が今後ますます求められていくのではないでしょうか。

大今里ケアホームについて

大阪市内で、医療法人浩治会がが運営する介護老人保健施設。
短期入所から通所・訪問・居宅サービスなど幅広い対応力が特徴。
医師や看護師が常駐する安心な医療支援体制も整っています。
機能回復訓練の一環として、施設内でのレクリエーションや多彩なイベントも実施されており、ご利用者の心身の活性化にも力を入れています。

設立

2005年11月

所在地

大阪府大阪市東成区大今里西2-17-16

施設種別

介護老人保健施設

運営法人

医療法人 浩治会

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