
エバーライフ御殿山
種別:
介護付き有料老人ホーム
定員:
60名
目的:
負担軽減・業務効率化
取材日:2025/09
お話を伺った方 | 館長 大西泰彦 氏
大阪府枚方市にある「エバーライフ御殿山」は、奈良東病院グループが運営する介護付き有料老人ホームです。
1ユニット12名の少人数制で、24時間安心して過ごせるケア体制と、温もりのある生活環境を提供していることが大きな特長となっています。
課題と導入背景
本施設では、以下のような業務上の課題を抱えていました。
- 入居者の状態変化をいち早く察知するための体制づくり
- 夜間帯の見守り体制と安心感の確保
- 記録業務にかかる職員の負担軽減と効率化
こうした課題に対して導入を決めたのが、
見守りセンサー「眠りSCAN」・記録ソフト「ケアカルテ」・音声入力支援「ハナスト」の3点セットです。
導入の経過と成果
導入から半年以上が経過し、安全性の向上・業務の効率化・職員の安心感といった多面的な成果が現れてきているようです。
今回は、館長の大西様にお話を伺い、導入の背景や効果、活用のポイントをまとめました。

課題
- 2時間ごとの夜間巡回が職員・入居者双方の負担になっている
- 手書きの介護記録では記入と保管・都度の確認に時間を要している
- 入居者の状態把握や変化をリアルタイムに把握しづらい
導入機器
- 眠りSCAN 60台
- ケアカルテ
- ハナスト・インカム 18台
導入の決め手
- 状況把握と通知ができる機能性
- 「必要なときだけ駆けつける」という運用イメージの明確さ
- 記録システムを軸に連携できる機器を選択していった
- システム連携によるテクノロジーの一体利用ができること
効果
- 夜間の巡回スタイルが一変、入居者にも職員にもやさしい環境に
- 職員の夜間業務の負担が軽減、心理的安心感も向上
- 申し送り時間の大幅に削減し、不要な館内移動も無くなった
- 入居者の状態変化について説明責任をしっかりと果たせるようになった
職員の声や課題を「見える化」し、現場で活用しやすい運用方法を一緒に模索できたことが、今回の成功要因のひとつとなっています。
活用成功の決め手
現在、導入から約9か月が経過し、現場では機器の使用に十分に慣れてきました。
職員や現場の課題認識が共有されており、「これまでの業務スタイルに負担を感じていた」「改善できるなら取り組みたい」という前向きなマインドがあったことが、スムーズな導入の背景にあります。
導入前には、導入済みの施設への見学や職員向けの体験学習を進めるなど、現場での不安や混乱を減らす準備を進めていました。こうした事前の丁寧な準備が、導入をスムーズにする大きな要因となりました。
【取材メモ】
現場の統制や周知が徹底されるなどの体制が既に取れている施設だったことは、スムーズな導入と活用ができた理由のひとつであると感じました。
スタッフ全員が納得感をもって進められる「段階的導入」
いきなり全居室に導入するのではなく、まずは3階ワンフロアの24床でのトライアルスタートを実施。
使用のイメージをしっかりと持ち、実際に使用してみて、「こう使っていくのが良い」「こう工夫してみよう」という現場の順応ができていることで、活用がしっかりと根付いていったといえます。
勉強会の開催やマニュアルの作成も行いましたが、「習うより慣れろ」を強く実感しましたね。
日常の配置を考慮した使いやすさへの工夫
インカムは機能性と価格を考慮し、機能性を重視した使いやすいモデルを採用しました。導入時のコストはかかりましたが後々もしっかりと使われる機器を選ぶことは大きなポイントです。
ひとりに1台のインカムを配布しており、共用することへの余計なストレスが発生しないようにしました。
見やすい定位置での収納や充電体制を整えています。
また、詰所内の備品は一元管理がしやすいように整理整頓されており、モニター配置や充電設備の配置もスタッフ動線を考慮して工夫しています。


手書きからの移行については、予想以上にスムーズで、スタッフからも「思っていたよりも使いやすい」という声が多く聞かれました。もともと記録にかかる時間の長さや転記ミスの防止が課題とされていたため、音声入力やタブレットへの移行は歓迎されましたね。
音声認識がうまくいかない職員は、手打ち入力への変更を行うなど、裁量をもたせながら進めたことで、活用に慣れるまでの不安を最小限に抑えることができました。また、記録時間の短縮だけでなく、夜勤帯の引き継ぎ内容が明確になったことによる安心感にもつながっていると思います。
確実に変わった業務のスタイル
見守り業務
離れていても入居者の状態を的確に把握できるようになりました。これは短期間で大きな効果を発揮しており、急な変化にも迅速に対応できるようになっています。
医療スタッフや家族への連絡もスムーズになり、「知らずにそのまま」という事態が起こりにくくなりました。
ご家族・入居者・スタッフそれぞれに安心感をもたらすとともに、施設としてもサービス提供の質を向上できていると感じています。
情報の収集と記録の入力業務
音声入力により、何かをしながら記録が行えるようになりました。
例えば、食事が終わったタイミングで食事摂取量をその場で音声入力するなど、従来は「下膳→記録」といった手順を経ていた作業が、動線を変えずに完結できるようになりました。
これにより、現場業務の流れを妨げることなく、正確で漏れのない記録が実現できています。
記録のためにデスクに戻ってペンを持つ、というようなひと手間も不要になり、業務の効率化につながっています。
記録と情報の確認業務
紙の記録ではなくなりましたので、わざわざ保管場所へ閲覧をしにいくことが無くなりました。
端末で確認ができるので、館内移動をしなくてもよくなりました。
オンコール担当の場合は、手持ちの端末で情報を確認ができるので、過去の記録から最新の内容まで、抜けがなく確認できるようになっています。


【取材メモ】
複数の機器を連携して活用することで、従来の業務スタイルから大きく変化し、現場が格段に楽になったことを実感されているようです。
🗣 ご家族・スタッフの反応
ご家族からの安心感ある声
センサー導入後、ご家族からは
「夜間もきちんと見守られているのでとても安心している」
「職員さんが負担なく見てくれているのなら、ありがたい」
といった前向きな声が多く寄せられているとのこと。
施設の夜間体制や介護の在り方が“目に見える安心感”として伝わるようになったことで、ご家族との信頼関係もより強固なものとなっています。
スタッフ間の共有がスムーズに
導入したセンサーの記録データは、チーム全体で共有可能な仕組みとなっており、
「夜勤帯の状況を日勤帯も把握できるようになった」
「記録の抜けやバラつきが減り、引き継ぎがスムーズに」
といった実感が現場で広がっています。
特に「誰が・どのように対応したか」ではなく、「何が起きていたか」という客観的な事実の共有がしやすくなったことは、
スタッフ間の心理的な安心感や信頼にもつながっているとのことです。
🔭 今後の展望
グループ内の他施設への展開も視野に
エバーライフ御殿山での導入成功例をもとに、今後はグループ内の他施設への展開も検討されているとのこと。
「運用ノウハウや職員の理解が進んできたので、拡大導入の準備は整ってきた」と、大西館長は話します。
センサーを“ケアの質向上”として浸透させたい
センサーを職員の業務負担軽減ツールとしてだけでなく、
「ご入居者の生活リズムや尊厳を守るための仕組み」として位置づける意識改革が、現場でも着実に進んでいます。
「見守り=監視ではなく、安心感の可視化」
という考えを全職員に共有しながら、テクノロジーを活かしたケアのスタンダード化を目指していきたいとのことです。
支援制度の活用
本取り組みは、令和6年度 介護テクノロジー導入支援補助事業を活用して実現されました。
さらに、大阪府介護生産性向上支援センターの「伴走支援プログラム」にも採択され、導入前の製品選定から効果測定、運用のポイントまで、専門アドバイザーとともに推進されました。
補助金制度の活用により初期費用の負担が軽減され、現場からも前向きな声が上がったことも導入の大きな後押しでした。
また、伴走支援によって経営層・現場双方の納得感ある導入プロセスが実現できたことが、定着と活用の成功につながったとも言えるでしょう。
テクノロジー導入で変わったこと
スタッフ体制と業務の回し方にゆとりが生まれた
もともとスタッフの入れ替わりが少ない安定した職場ではありましたが、自然減による離職は一定数ありました。
それでも導入から9か月の間、新たな求人を出すことなく、現在の人数で業務が円滑に回っている状況です。
現場からも「増員の必要は感じていない」「現体制で問題なく回せている」といった声が上がっており、職員の負担が抑えられたことによる安定運営ができています。
結果として、求人募集にかかるコストや面接・見学対応に割いていた時間も削減され、施設運営上の大きなメリットにつながっていますね。
ご家族への対応にも好影響
入居見学の場では、タブレット端末の画面を見せながらセンサーの感知状況を説明することで、ご家族にも安心していただける機会が増えました。
「このような体制なら安心して預けられる」といった声も聞かれており、情報の見える化が信頼形成に寄与していることを実感しています。
まとめ・読者へのメッセージ
エバーライフ御殿山では、夜間巡回や記録業務といった長年の日常的な業務負担に対して、テクノロジーの力を活用することで着実に業務変化を生み出しています。
特に、「必要なときにだけ動く安心感」と「見える化によるチーム内の信頼醸成」は、現場スタッフにとって大きな意味を持つ成果となりました。
今回お話を伺った館長の大西氏が繰り返し語っていたのは、「現場が使いたいものが一番」「導入したら終わりではなく、使っていくことに価値がある」というシンプルかつ本質的なメッセージです。
その言葉の通り、丁寧な準備と導入後のしっかりとした活用、スタッフ間の意識の持ち方が、テクノロジーを“現場に根づかせる”鍵となったことがうかがえます。

エバーライフ御殿山について
大阪府枚方市内で、株式会社ライフエールが運営する、介護付き有料老人ホーム。
京阪「御殿山駅」より徒歩3分という好立地にあり、医療機関との連携体制も整っていることから、安心・安全な暮らしを支える体制が整っている。
設立
2008年5月
所在地
大阪府枚方市渚西1丁目32-1
施設種別
介護付き有料老人ホーム
運営法人
株式会社ライフエール(奈良東病院グループ)