1|移乗支援フェアについて
「移乗機器、使いこなせていますか?」を合言葉に、移乗支援機器を“操作・体験”し、使い分けのコツを学ぶ実践型イベント「移乗支援フェア2026 in 大阪」が開催されました。

当日は、介護施設の管理者・フロアリーダー・理学療法士・福祉用具専門相談員など、多職種の方が参加し、会場は終始活気に包まれました。
本フェアは、単なる技術研修ではなく
- リフト
- 非装着型移乗支援機器
- 装着型移乗支援機器
- 福祉用具などの補助ツール
を横断的に体験し、「導入」ではなく「使いこなし」までを見据えた移乗支援力の向上を目的として企画されたものです。
移乗支援機器の普及は進んでいる一方で、
「導入したが十分に活用されていない」「使い分け基準が整理されていない」といった課題も少なくありません。
本フェアは、そうした現場の実情を踏まえ、実際に機器に触れ、比較し、専門家の視点を通して理解を深めることで、
現場に持ち帰り、実装につなげるための学びの場として実施されました。
ロボタスネットは、移乗支援環境の整備を推進する立場として本企画に参画し、現場のリアルな声や動きに触れる貴重な機会となりました。
2|このイベントの狙い
近年、負担の少ない移乗支援に関する考え方は全国に広がりを見せています。
一方で現場では、介護リフト・非装着型支援機器・装着型支援機器・各種補助ツールなどを導入していても、対象者や場面に応じて効果的に使い分ける「移乗支援体制」が十分に定着しているとは言えない状況も見受けられます。
実際の現場では、次のような声も少なくありません。
- 導入したが十分に使われていない
- 特定の職員しか使えない
- 機器ごとの使い分けが整理されていない
- 管理者が効果を評価できない
つまり課題は、「機器の有無」ではなく「活用の設計」にあると言えます。
本フェアでは、単に話を聞くだけではなく、最新機器を実際に操作・体感し、現場に持ち帰れる“使い分けの視点”と“運用のコツ”を得ることを重視していました。そして現場に持ち帰り、組織として活かすための“使い分けの視点”と“運用のコツ”を得ることを狙いとしていました。
3|当日のプログラムハイライト
1)専門家による実践セミナー
専門家による実践セミナーでは、現場目線と管理者目線の両面から、機器活用を定着させるためのポイントが具体的に解説されました。
単なる製品紹介ではなく、
- 非装着型支援機器の効能と有効活用のポイント
- 装着型支援機器の活用場面と導入の考え方
- リフトを現場で定着させるための進め方(懸念の整理・注意点・成功要因)
「導入後に使われない状態を避けるための視点が整理できた」
「現場で起こりがちなつまずきと対処が具体的だった」
といった声が多く寄せられました。

非装着型実践セミナー~住まいと介護研究所 谷口昌宏氏~

リフト実践セミナー~ビオネスト 岩城隆久氏~

装着型実践セミナー~ロボタスネット逢坂大輔~
講演の中で特に印象的だったのは、
「トップの強いメッセージがあるからこそ、現場は支援機器を使っていくようになる」
「施設・経営トップの方は積極的にメッセージを発信していくべき」
という力強いメッセージでした。
移乗支援は、個人の努力に委ねるものではなく、組織として推進するテーマであることが改めて示される時間となりました。
2) 基調講演
基調講演では、「移乗支援技術の進化と介護動作の未来」をテーマに、移乗支援を取り巻く社会的背景と技術発展の流れについてお話がありました。
講演ではまず、装着型支援機器と非装着型支援機器それぞれの特徴や役割の違いが整理され、単に“どちらが良いか”ではなく、対象者・場面・目的に応じた適切な選択と組み合わせが重要であることが示されました。

基調講演~九州工業大学 柴田智広氏~
さらに、製品開発支援の視点から、
- 現場ニーズと技術開発のギャップ
- 安全性と実用性の両立
- 導入後の運用設計の重要性
などについても触れられ、移乗支援機器は「製品単体」で完結するものではなく、現場実装までを含めた設計が必要であることが強調されました。
また、日本の人口減少と労働力不足という構造的課題にも言及されました。
今後、働き手は確実に減少していきます。
介護分野においても、人材確保は年々困難になっており、少ない人員でも安全かつ質を維持できる体制づくりが求められています。
その中で移乗支援は、単なる介助負担軽減のための技術ではなく、
- 働く人を守る仕組み
- 持続可能な介護体制を構築するための基盤
- 組織マネジメントのテーマ
であるというメッセージが強く伝えられました。
移乗支援は“補助”ではなく、これからの介護を支える“インフラ”である――
その視座を参加者が共有する時間となりました。
3)メーカーセッション・機器体験
会場では各メーカーから、製品の特長紹介にとどまらず、現場での運用を想定した提案や導入時の注意点が共有されました。
メーカーセッションは、機器ジャンルごとに時間を区切り、
- 製品説明プレゼンテーション
- その後に体験・操作時間
という流れで進行しました。

メーカーセッションの一コマ
単に「触ってみる」のではなく、製品の考え方や想定場面を理解したうえで体験する構成となっており、参加者が目的意識を持って操作できる設計が印象的でした。
本フェアは“比較できる場”であることを特徴としており、参加者は複数の機器を実際に操作・体験しながら、それぞれの違いや適応場面について理解を深めていました。
講演後の体験時間には、各ブースに途切れることなく来場者が訪れ、メーカー担当者との質疑応答も活発に行われました。
ブース対応をしていたメーカー担当者からは、
「講演後は特に来場者が集中し、皆さん非常に熱心に体験されていた」
「具体的な利用者像を想定した相談が多かった」
「多くの方に実機をご体験いただき、現場でデモをする話へと進んでいった」
との声が聞かれています。
参加者からは、
- 「用途で選ぶ視点が整理できた」
- 「自施設の環境に当てはめて考えられた」
- 「同じ“移乗支援”でもアプローチが異なることが理解できた」
といった感想が寄せられました。
“体験して初めて分かる違い”が、参加者の理解を大きく深め、単なる情報収集ではなく、導入検討や運用改善へとつながる実践的な機会となっていました。
4|パネルディスカッションから見えた「定着の条件」
「現場が変わる移乗支援導入のリアル」をテーマに、導入・定着の現実について多角的な議論が行われました。

パネルディスカッションでの一コマ
登壇者それぞれの立場から、成功事例だけでなく、現場で直面する葛藤や課題についても率直に共有され、会場からの質疑にも応答する形で、実践的な議論が深まりました。
議論の中心となったのは、次のポイントです。
- 定着のために必要な3要素
安全性・業務設計・教育の3点をセットで整えることが不可欠である。 - トップの意思決定と発信
導入に成功している施設では、トップの強いメッセージによって方向性が明確になっている。 - 「つらい移乗」を当たり前にしない
「つらい移乗には声を上げていこう」「辛抱する必要はない」という発言には、会場も深くうなずいていました。 - 人に頼らない設計への転換
人手不足が進む中で、人の頑張りに依存しない仕組みづくりが求められている。 - 今を逃さない行動
補助金活用のタイミングや、求人情報に取り組み姿勢を明示することが採用にも影響している現状など、具体的な視点も共有されました。
移乗支援は「個人の努力」ではなく、組織文化として設計することが鍵である――
その共通認識が、登壇者・参加者の間で確認される時間となりました。
5|現場のリアクション “比較体験”が導入検討へ
今回のフェアでは、実際に機器を操作しながら比較できる点に高い評価が集まりました。
通所リハビリテーションの担当者からは、次のような声が寄せられました。
「ブースで実際に比較体験ができて本当に良かったです。
ちょうど機器使用を検討している利用者様がいるタイミングだったので、
とてもタイムリーに相談と情報収集ができました。」
さらに、
「施設に機器を持参いただき、実際の環境で検証しながら導入を検討することになりました。」
という具体的な次のアクションにもつながっています。
これは、単なる情報提供の場ではなく、
“現場実装への起点”となるイベントであったことを示す象徴的な事例です。
移乗支援は、タイミングと現場環境が大きく影響します。
その場で比較・相談ができる機会が、導入判断を大きく前進させました。
6|より良い移乗支援を考える
今回のフェアを通じて明確になったのは、
「機器の選択」以上に
「使い分け基準」と「運用設計」が求められている
ということです。
移乗支援は、
- 職員の身体を守る
- 利用者の安全を高める
- 生産性を向上させる
- 離職防止につながる
といった多面的な価値を持っています。
しかし、それは“導入”だけでは実現しません。
現場で使われ、継続されてこそ意味を持ちます。
機器を置くことではなく、“どう使い、どう定着させるか”が問われています。
7|今後に向けて
移乗支援は、現場の安全・安心はもちろん、働き続けられる環境づくりに直結するテーマです。
そしてそれは、単なる技術導入ではなく、組織の意思決定と設計の問題でもあります。
今回のフェアは、その実装に向けた第一歩となりました。
ロボタスネットでは、今後も「移乗支援体制」を高める取り組みを継続し、現場で使われる・続く支援の形を皆さまと共に広げてまいります。
ご来場・ご協力いただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
\移乗支援機器や現場の体制に関する情報収集には下記のアンケート結果もご覧ください/
