【専門家コラム】見守りシステムの選び方 -介護DX時代の「安全」と「効率」をつくる視点-

介護現場におけるDXは、単に機器を導入することではなく、“利用者と職員の安心”を中心に置いた現場変革です。
その中でも、見守りシステムは 安全確保・夜勤負担軽減・業務効率化・家族の安心 を支える重要なテクノロジーとなっています。

しかし実際には、
「どの製品もよく見える」
「比較ポイントが分からない」
「施設に合うか不安」
といった声も多く、選定や運用に悩む施設が少なくありません。

見守りシステムの導入で成果を出すためには、
アナログ(観察・判断・ケア)とデジタル(センシング・通知・記録)を融合し、
目的に合ったツールを使いこなせる現場づくり
が不可欠です。

本コラムでは、現場と経営の間に立って導入を推進するミドル層にも役立つよう、
専門家の視点から 最新トレンド/選定ポイント/おすすめ5製品の特徴 をわかりやすく解説します。

介護現場で“見守り”が進化している背景

介護現場で見守りシステムが「体動検知」から「状態把握・ケア支援」へと進化している背景には、
次の3つの大きな要因があります。

  • 夜勤職員の負担軽減ニーズの高まり
    • リアルタイム映像や手元端末で状態を確認できることで、駆けつけ判断の精度が向上し、対応の優先順位が付けやすくなった。
    • 限られた夜勤人数でも巡視頻度を適正化でき、見守りの質と安全性が向上
    • “異常が出てから駆けつける”から、“変化を早期に察知して先手を打つ”ケアへ移行しつつある。
  • ご家族への安心提供ニーズの増大
    • 映像確認や状態共有によって、「離れていても見守られている」安心感が確保できるようになった。
    • ベッド上の変化や夜間の様子が把握できるため、家族との信頼形成や説明責任の向上にも寄与している。
  • データの活用価値の高まり
    • 呼吸・心拍などのバイタルデータと生活リズムを合わせて把握することで、状態変化の兆しを早期に察知できるようになった。
    • 収集データをカンファレンスやケア会議で活用し、個別ケア計画の質を改善する取り組みが広がっている。
    • 見守りが“安全確保”だけではなく、ケア品質の向上と科学的介護(LIFE)につながる情報源となっている。

💬見守りシステムは「異常を検知する装置」から、“状態を把握し、ケアにつなげる介護DXツール”へと進化しています。

見守りシステムのタイプと特徴

タイプ主な特徴得意なケース
体動センサー型マット/ベッド下で体動・離床を検知シンプルに離床を知りたい
環境・バイタルセンサー型温湿度・心拍・呼吸を取得状態変化も見たい
映像記録型姿勢・徘徊・危険動作を高精度検出転倒・体勢変化・危険動作の把握
生活リズム分析型日常の活動量や睡眠のリズムを把握予防介護・データ活用・見守り
AI予測型(次世代)行動・睡眠・心拍変動から兆候を予測急変予防・科学的介護

※本表はロボタスネットが有する知見と公式情報を元に独自に作成したものです。

専門家が選ぶ見守りシステムおすすめ5選

機能・精度・使いやすさ・コスト・現場評価の観点から総合的に選んだラインナップです。

ANSIEL

積水化学工業株式会社

【概要】

ANSIELは、マットレス下に設置することで、
起き上がり・離床・体動・心拍・呼吸 を非接触で検知できる“見守りセンサーのスタンダードモデル”です。

離床リスク管理や夜間巡視頻度の最適化など、シンプルかつ精度が求められる現場に強いモデルとして多くの施設で導入されています。

【主な特徴】

  • 非接触・非拘束で快適
    利用者に触れずに状態を検知できるため、ストレスなく導入可能。
  • 約5秒以内のスピード通知
    起き上がりなどの動きを即座に検知し、ナースコール連携も可能。
  • 心拍・呼吸も見える化
    在床中の呼吸・心拍の状態をクラウドでモニタリング。異常の早期察知に寄与。
  • クラウド管理で複数部屋の状態を一元化
    見守りダッシュボードにより、少ないスタッフ体制でも施設全体の状態を把握しやすい。
  • 睡眠解析も可能(オプション)
    NEZAMEL機能により、浅睡・深睡など睡眠の質を細かく分析。

【適した施設・利用者像】

  • 軽度〜中度の利用者が多い施設
  • 離床タイミングを確実に把握したい特養・老健
  • 夜勤2人体制で巡視頻度に限界がある施設
  • 「まずは離床センサーから導入」を検討している施設

【想定される活用シーン】

  • 夜間の離床検知による転倒予防
  • 夜勤巡視の負担軽減
  • 早朝の起き始めの変化から状態悪化の予兆把握
  • 生活リズム改善の指標として睡眠状態を活用

【専門家コメント】
体動・離床センサーの中で、「精度・扱いやすさ・安定性」バランスが最も良いモデルの1つです。
特に、「バイタルセンシングと、離床検知は確実に押さえたい」という施設に最適です。
またNEZAMELを併用すれば、睡眠データの活用による早期変化の察知にも対応でき、単なる離床センサーを超えた価値を発揮します。

画像引用(https://www.sekisui.co.jp/)

LASHIC care

【概要】

LASHIC CAREは、室内環境(温度・湿度・CO₂)+ 非接触バイタル(呼吸・心拍)を同時取得できる“環境×体調変化に強い”見守りシステムです。

夜間の急変・脱水・呼吸状態の異常など、アクシデントの兆候を早期に察知できる点が最大の特徴です。

【主な特徴】

  • 呼吸・心拍の非接触モニタリング
  • 室内環境データの自動取得
  • 異変アラートで夜間負担を軽減
  • 複数居室のバイタルを一元管理
  • 看取り期・医療的ケアに強い

適した施設・利用者像

  • 複数居室の状態をまとめて把握し、夜間巡視の効率化を図りたい施設
  • 室内環境(温度・湿度・CO₂)の変化による体調悪化リスクが高い利用者が多い施設
  • 呼吸・心拍などのバイタル変動を“早めに察知”したい医療的ケアが必要な施設
  • 看取り期や体調不安定な利用者の“見守り強化”が必要なユニット

【想定される活用シーン】

  • 夜間の体調変動の早期察知
  • 体調悪化の予兆を環境と組み合わせて把握
  • 体調が安定しない時などの状態モニタリング
  • バイタル観察を効率化したい施設

【専門家コメント】
“健康状態の変化” をいち早く察知したい施設に最適。
体調変動の多い利用者が多いユニットに強く、事故前の“違和感”を捉えられる製品です。

画像引用:(https://facility.lashic.jp)

C-エイド

株式会社シキノハイテック

【概要】

介護施設での見守り業務を支援する、ミリ波レーダー+カメラ一体型の見守りシステムです。
ご利用者の起き上がり・離床・睡眠・呼吸などを高精度に検知し、高速離床検知(最短2秒)により異変に素早く気づける体制づくりが可能です。
離床前動作やバイタル異常の通知から、ご利用者の状態変化を察知でき、転倒事故の防止に役立てることができます。

【主な特徴】

  • ダブルセンシング方式(カメラ+ミリ波)による昼夜を問わない高精度検知
  • イベント前後の録画機能で発生状況を映像確認
  • スタンド設置と壁への設置が選べる柔軟な運用
  • 専用サーバー管理による安全なデータ保存

【適した施設・利用者像】

  • “転倒・離床の瞬間”を確実に把握したい施設
  • 夜勤の巡視負担を減らしつつ、確実なリスク検知を行いたい特養・老健
  • プライバシーを守りながらも、リアルタイム映像確認をしたいユニット
  • 徘徊・不穏・離床リスクが高い利用者が多いフロア

【想定される活用シーン】

  • 日中から夜間の離床・転倒リスク検知
  • 転倒ハイリスク者への重点配置
  • 睡眠・呼吸の見守り
  • 職員の巡回負担軽減

【専門家コメント】
C-エイド は カメラ映像 × ミリ波レーダー のハイブリッド構成により、“転倒・離床の予兆から瞬間まで” を捉えられる数少ない見守りシステムです。
スタンド設置で工事をほとんど必要とせず、 ベッド位置・レイアウトが変わっても柔軟に対応できる 点も大きな魅力。
夜勤の巡視負担を確実に減らしつつ、リスクの高い利用者を重点的に見守りたい施設に特に向いています。

画像提供(シキノハイテック

眠りSCAN

パラマウントベッド株式会社

【概要】

眠りSCANは、介護業界で最も普及しているといえる 睡眠・離床センサーの定番モデル で、
マットレス下に設置するだけで、離床・睡眠深度・心拍・呼吸を高精度に測定できます。

データ活用型介護との親和性が高く、“睡眠状態を見える化する” において圧倒的に実績があります。

【主な特長】

  • 非接触で心拍・呼吸・体動を検知
  • 睡眠状態(深睡眠・浅睡眠)の可視化
  • 離床・起き上がりの検知精度が高い
  • LIFEデータの連携に強い
  • カンファレンスに使える睡眠レポート

【適した施設・利用者像】

  • 軽度~中度の利用者が多く、夜間の離床・徘徊の把握を確実に行いたい施設
  • 夜間の見守り頻度の最適化が課題になっている特養・老健
  • 「周りが入れている」安心感から見守り機器を選定したい施設

【想定される活用シーン】

  • 夜間巡視の削減
  • 睡眠障害・生活リズムの把握
  • 加算(ADL維持等加算・科学的介護)への活用
  • 医療的ケアとの連携

【専門家コメント】
“睡眠状態を可視化してケアを改善したい施設” に最適のベースモデル。
特養・老健・サ高住など、どの施設にも導入しやすく、汎用性の高いシステムです。​

画像引用(https://www.paramount.co.jp/)

Neos+Care ネオスケア

ノーリツプレシジョン株式会社

【概要】

Neos+Careは、3次元電子マットや距離センサーを用いて、利用者の「起き上がり・端座位・柵越え・ずり落ち」などの危険動作の予兆を高精度に検知し、転倒・転落事故の未然防止を支援する次世代見守りシステムです。

利用者の動きや居室の状況を、シルエット映像+センサー検知により捉えることで、プライバシーに配慮した運用を実現しています。

【主な特徴】

  • 3次元電子マット/距離センサーによる早期検知
    起き上がり・端座位・柵越え・ずり落ちなど、転倒に至る前の動作を捉えます。
  • プライバシー配慮シルエット可視化+スマホ通知
    カメラ映像をシルエット化し、専用端末で状況確認可能。不要訪室の削減に繋がっています。
  • データ蓄積と分析機能
    検知履歴をもとに動作傾向をグラフ化し、ケア改善・転倒リスク分析に活用可能。
  • 介護記録システム連携
    検知データや動画を介護記録へ連動・統合することで、入力負担軽減と記録精度向上を実現。

【適した施設・利用者像】

  • 転倒・転落リスクが高い利用者やユニット
  • 夜間見守りが重く、離室や徘徊が課題の施設
  • プライバシーへの配慮が必要な個室多めの施設
  • ケアプランやADL変化をデータで把握したい施設

【想定される活用シーン】

  • 夜勤中の離床/端座位の予兆検知による転倒未然対応
  • 起き上がり動作の増加からのケア介入タイミング設定
  • モニタデータを用いた分析会議・カンファレンス資料
  • プライバシー配慮型の見守りを実践する施設設計

【専門家コメント】
Neos+Careは “転倒事故対策を根本から変える” 製品です。
単なる離床検知や体動検知ではなく、“危険動作の兆候を捉える”という次世代の手法により、転倒予防・夜勤業務の効率化・ケア品質向上を同時に実現します。

画像引用:(https://www.noritsu-precision.com/neoscare/)

導入前に押さえるべき3つの重要ポイント

ポイント
何を解決したいのかを明確にする

見守りシステムはどれも“良さそう”に見えますが、目的によって最適なツールは異なります。

たとえば…

  • 転倒の発生を減らしたいのか?
  • 夜間の巡視回数を減らしたいのか?
  • 呼吸・心拍などの状態変化を把握したいのか?
  • 徘徊・危険動作の予兆を捉えたいのか?

解決したいポイントを明確にして導入を進めていくと、
「思ったより使いにくい」「効果が見えない」という失敗につながることは少ないでしょう。

👉 目的 → 検知したい動作 → 選ぶべきタイプ

この流れで整理すると、最適解に辿り着きます。

ポイント
ナースコールや既存システムと連携できるか

見守りシステムは“単体で動く機械”ではなく、
ナースコールやICT基盤との相性が成果を左右します。

  • 連携できないと通知が二重になり職員負担が増える
  • 通信環境が弱いと通知遅延が発生し逆効果
  • 設備更新が必要な場合、追加コストが発生するケースも

「テクノロジーを入れたのに、逆に負担が増えた」
という現場の不満は、ほとんどが連携設計の不足が原因です。

導入前に、“今のナースコールと連動できるか”“Wi-FiやLAN環境は十分か”、を必ず確認しましょう。

ポイント
導入後の“活用支援”があるか

最も多い失敗はこれです。

「買ったのに、全然活用できていない…」

原因は明確で、

  • ルール作成ができていない
  • スタッフトレーニングが不足している
  • 活用方法が属人化している
  • 機能が多すぎて使いこなせていない

という“運用設計の不足”にあります。

見守りシステムは、導入して終わりではなく、“使いこなした時点で初めて成果が出る”ツールです。

🔍 ロボタスネットが提供している支援

  • 運用ルールの作成(通知の優先順位設定、記録方法、対応手順)
  • 夜勤者・新人向けの活用トレーニング
  • 導入後の分析(通知数・対応時間・巡視頻度の変化など)
  • メーカー横断の比較提案と現場フィッティング

“買って終わり”にしないための伴走支援体制があるかどうかは、見守りシステム活用の重要ポイントです。

見守りシステムは「成果が出る導入」を!

見守りシステムは、介護の「見逃さない」を支援するだけでなく、“気づきを支援するテクノロジー”へと進化しています。

転倒や離床の検知だけではなく、夜間巡視の最適化、生活リズムの変化の早期察知、さらには急変や不穏の予兆に至るまで、
データを通じて利用者の「いつもと違う」を見える形にしてくれるようになりました。

しかし、その価値を最大限に引き出すには、適切な選定、導入時の設計、現場の運用に寄り添ったサポートが欠かせません。

どれほど高機能な見守りシステムでも、通知が多すぎて疲弊したり、誰も見なくなったり、“置いてあるだけ”になってしまっては意味がありません。

ロボタスネット(介護DXナビ)は、
現場の動線や人員配置、利用者特性に合わせた 見守り体制の設計と定着支援 を得意としています。
「導入して終わり」ではなく、“使いこなせるところまで伴走する”ことを大切にしています。

「どの機器を選ぶべきか分からない」
「うちの施設に本当に合うか不安」
「現場が使いこなせる仕組みまで整えたい」

そんな時は、どうぞお気軽にご相談ください。
あなたの施設に最適な“見守りDX”のかたちを、一緒に創っていきます。

見守りシステム比較診断・相談受付中
「貴施設に最適な見守りソリューション」を専門アドバイザーがご提案します。

著者プロフィール・関連リンクのご案内

逢坂 大輔(ロボタスネット株式会社)
大阪府介護生産性向上支援センター 業務アドバイザー
ATCエイジレスセンター アドバイザー
理学療法士/介護DX・業務改善コンサルタント

介護・医療分野で約25年にわたり、業務改善、介護テクノロジー導入、腰痛予防支援、機能訓練支援の領域で専門的支援を行う。
理学療法士としての身体運動学の知見と、複数メーカーのアシストスーツ・見守り機器・移乗支援機器の比較提案を行い、「テクノロジー活用による業務最適化」「働き続けられる職場づくり」の実現をテーマに伴走支援を実施。

現場の業務フロー改善から、補助金活用支援、機器導入後の定着・評価まで、
“導入して終わりではない”支援スタイルに定評がある。

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